「1型糖尿病」とは
原因は不明ですが、ある日突然「自己免疫反応により膵臓のβ細胞が破壊される」ことが原因で起きる糖尿病です。インスリン分泌の高度低下、あるいは枯渇を認めインスリン治療を必要とします。小児~青年期の方に多い傾向がありますが、高齢での発症も珍しくはありません。日本では現在10万人程度の患者数と考えられています。
インスリン分泌の高度低下、あるいは枯渇を認め生涯にわたるインスリン治療が必須ですが、インスリンを正しく打てばそれ以外の生活については特に制限はありません。合併症のコントロールが良好であれば妊娠、出産も可能で多くの一型糖尿病患者さんがご出産を経験されています。
1型糖尿病の原因
健康な人の場合は体内でインスリンが作られるので、ブドウ糖を細胞内に取り込んでいくことに支障をきたしません。
しかし1型糖尿病の場合、外敵から守る役目であるはずの免疫細胞が、膵臓のランゲルハンス島と呼ばれる部分にあるβ細胞を破壊してしまうことにより、インスリンがほとんど作れなくなってしまう事が原因です。
ただし、免疫がβ細胞を破壊してしまうきっかけに関しましては、現代においても未だはっきり解明・特定されていません。
1型糖尿病の分類
1型糖尿病はβ細胞の破壊速度によって、以下の3種類に分けられます
劇症1型糖尿病
発症してから1週間前後でインスリン依存状態になってしまい、3種類の中では一番劇的な速度で進行します。
すぐにインスリン療法を受ける必要があり、重症化する可能性が高くなります。処置が遅れてしまうと「糖尿病ケトアシドーシス」のリスクが高くなるので、速やかに処置を行いましょう。1週間という極めて短い期間で進行していくため、過去1~2カ月のHbA1cが高血糖の割には、8.7%をを超えません。
急性発症1型糖尿病
発症からおおむね3ヶ月以内にインスリンの枯渇を認め、インスリン療法が欠かせなくなります。
血液検査では、自己の細胞・組織に対してつくられた「自己抗体」が多くの場合確認されます。
緩徐進行(かんじょしんこう)1型糖尿病
年単位で徐々にインスリンの分泌量が低下していくタイプです。2型糖尿病と誤った診断を受けている場合が多いとされます。採血で自己抗体が確認される事により診断されます。
1型糖尿病の治療
1型糖尿病を発症した方は、インスリン注射を使った治療法を生涯続けていくことが必須です。残念ながら現代の医療技術においては、インスリンの注射を代替する方法はありません。
1型糖尿病の患者さんは「低血糖」に注意しましょう
薬物治療中は、「低血糖」にならないよう気をつけていきましょう。「低血糖」とは、血液中のブドウ糖(血糖値)が通常値よりも下がって70未満となっている状態です。
- 食事を行う時間
- 食事量
- 運動量
- インスリン注射の量
などが原因で、低血糖が引き起こされてしまう場合があります。しかし低血糖のなりやすさ・なりにくさに関しましては、個人の体質によって異なります。
しかし、重度になるとけいれんや昏睡の発症リスクが上昇してしまうため、大変危険です。吐き気、冷や汗、手の震え、動悸が出た際には低血糖の可能性があるので可能で有れば血糖測定の後に、あるいは血糖測定器を持っていない場合は血糖値が確認できなくてもすぐにブドウ糖などの糖質を摂取して血糖を上げるようにしてください。また出かける際はいつでもどこでも摂取できるよう、ブドウ糖が補給できる飲食物を欠かさず持ち歩きましょう。
Q&A
1型糖尿病の治療において、一番気をつけた方がよいことはありますか?
「インスリンを打たないこと」は絶対に避けてください。
特に持効型のインスリンについては、血糖値や食事の有無に関わらず必ず接種が必要です。
打ち忘れがないように、日頃から糖尿病の治療用で使っているノートやスケジュール帳に記録する習慣をつけてみましょう
治療において食事療法は意味がないとお聞きしましたが、それでも食事療法は必要ありますか?
1型糖尿病においては肥満を背景としない方も多く、減量のための食事制限は必要ない事が多いです。ただし食事の時に用いる速攻型のインスリンは食物中の糖質量によって必要な注射量が変わってくるため、食物中の糖質量を把握して、インスリン量を調整する事が重要となります。確かに治療では効果は発揮しませんが、それでも食事療法は必要です。
自分の子どもが1型糖尿病です。習い事や部活などでスポーツをやってみたいと言っていますが、激しい運動を行なっても大丈夫ですか?
特に心疾患や腎疾患など運動を制限する他の疾患がなければ構いません。ただし運動により血糖値が下がりやすくなるため、事前のインスリン量の調整が必要です。
1型糖尿病の場合、併発リスクの高い疾患はなんですか?
特に一型糖尿病には限りませんが、血糖コントロールが不十分なまま過ごしてしまうと、合併症が進行する事になります。