貧血とは
具体的に言いますと、血液中のヘモグロビン量(Hb)が以下になると、「貧血」に当てはまります。
ガイドライン | 治療開始Hb値 | 目標Hb値 |
---|---|---|
日本透析医学会(2008年) | 11g/dl未満 | 11g/dl以上、13g/dlを超える場合は原料・休薬を考慮 |
日本腎臓学会 (CKD診療ガイド2021年) |
10g/dl未満 | 10~12g/dl、12g/dlを超えないように配慮。13g/dl以上にしない |
KDIGO(2021年) | 10g/dl未満 | 10g/dl未満 10~11.5g/dl、13g/dlを超えないようにする |
しかし、この定義に当てはまるほどのヘモグロビン量になっても、なかなか自覚症状は現れません。7~8g/dlになってからやっと、自覚症状が強くなっていきます。
赤血球は脊髄で作られるもので、寿命は120日ほどです。この赤血球が壊されたり漏れ出てしまったりすると「貧血」になります。貧血の種類は色々ありますが、特に患者数が多いのは「鉄欠乏性貧血」です。
症状
赤血球の役割は「全身に酸素を運ぶこと」です。赤血球数が減少して貧血になると、酸素が全身に行き渡りにくくなってしまうため、以下などの症状が現れやすくなります。
- 易疲労感(疲れやすさ)
- 倦怠感
- 立ちくらみ
- 動悸や息切れ
- 頻脈
身体検査では主に、眼瞼結膜(下まぶたの裏側の結膜)や顔色が蒼白していないかを診察して、貧血の有無や程度を確認します。
診断
当院では全自動血球計数器を用いて、貧血の有無を迅速に確認することが可能です。貧血は平均赤血球容積(MCV)によって、以下のように分けられます。
- 小球性貧血
- 正球性貧血
- 大救性貧血
当院ではこれらの貧血の診断・治療の対応が可能です。日常の診察で見られる貧血のほとんどは「鉄欠乏性貧血」に当てはまるため、以下の項目で詳細を解説していきます。白血病や再生不良性貧血といった難病の疑いがある場合は、当院と連携している提携医療機関へ紹介いたします。
鉄欠乏性貧血
鉄欠乏性貧血とは、ヘモグロビン合成に欠かせない鉄分が不足することで発症する小球性貧血です。発症者の割合ですが、男性では0.5%、女性の場合は10%弱です。原因は主に「鉄分の不足」で、消化器がん(胃がんや大腸がんなど)や消化性潰瘍、痔による慢性的な出血から引き起こされます。特に女性の場合は、過多月経(生理時の出血量が多くなること)や頻発月経(生理の回数が多くなること)などの月経異常や、子宮筋腫、過度なダイエット・偏食から発症するケースが多いです。
消化管出血や消化器がんの疑いがある症状(血便や腹痛、下痢、便秘、食欲減退、体重の減少)などが確認できましたら、医療機関を紹介し胃カメラ(胃内視鏡検査)や便潜血検査、生化学検査、大腸内視鏡検査、腹部CTを施行して、診察いたします。
原因が特定でき次第、原因に対する療法を優先しますが、同時に食習慣の改善指導や鉄剤の処方も行います。貧血の状態がひどい場合は、輸血治療が必要になることもあります。